アスレティックトレーナーになるのは大変です。実習や座学など必要な講習をクリアして最後に検定試験を受け、合格しなければなりません。
しかし、アスレティックトレーナーはスポーツ選手やチームなどに帯同してサポートする仕事なので、きちんとした知識が必要になります。そのため覚える内容も多く合格率は低いです。この検定試験で受からず挫折してしまう人を何人か見てきました。
そこで今回はアスレティックトレーナー検定試験について解説させていただきます。試験についてを理解している方が合格にも一歩近づきますし、効率良く勉強できます。
アスレティックトレーナーとは
アスレティックトレーナーとはメディカルの分野に強みを持ったトレーナーを言います。スポーツドクターやコーチと連携を取り、トレーニング系はもちろんコンディショニング系でのサポートを行っていく大事な仕事です。 詳しくはこの記事を読んでもらえると分かります。
検定試験を受けるには?
検定試験は誰でも受けられる訳ではありません。検定試験受験資格が以下の2通りで取得できます。
①JSPO(日本スポーツ協会)が行う養成講習会を受講する。
②アスレティックトレーナー養成カリキュラムがある大学、専門学校で学ぶ。
①JSPO(日本スポーツ協会)が行う養成講習会を受講する。
JSPOが行う養成講習会を受講すれば検定試験を受けることができます。しかし、養成講習会を受けるにはスポーツ団体からの推薦を受けJSPOがOKを出さないといけません。それには条件が色々あります。
・トレーナー活動を現在も含め2年以上行っている
※スポーツ現場でJSPO-ATの活動定義による活動のみを対象とする。
・スポーツ医学、科学の研修会やセミナーの複数回の受講歴
・推薦してくれたスポーツ団体との関わり
・アスレティックトレーナーへの熱意
これらを記入した用紙をJSPOに送り問題なければ養成講習会を受講できます。
年によって細かい時期は変わりますが、養成講習会希望の方の審査を4月中に行い5月から申込み手続きが開始します。
養成講習会の概要
定員 | 100名程度 |
カリキュラム | 共通科目 150時間 専門科目 600時間 |
料金 | テキスト代含めて約9万円 |
カリキュラム(共通科目)
共通科目は事前に自宅学習をしてから3日間の講習を行います。
共通科目の内容は
1.グッドコーチ(日本スポーツ協会公認スポーツ指導者)に求められる人間力
2.グッドコーチに求められる医・科学的知識
3.現場・環境に応じたコーチング
となっています。講習を終えたら知識確認テストがあります。その後、自己学習という形でレポートを提出します。
JSPOのコーチ4か上級教師の資格保持者は共通科目の受講が免除になります。
カリキュラム(専門科目)
専門科目の講習はⅠ期、Ⅱ期、Ⅲ期に分かれており順番通りに受講しなければなりません。
専門科目の内容は
カリキュラム | 時間 |
JSPO-ATの役割 | 30 |
安全・健康管理とスポーツ外傷・傷害の予防 | 90 |
コンディショニング | 90 |
リコンディショニング | 90 |
救急対応 | 60 |
検査・測定と評価 | 30 |
人体の解剖と機能 | 60 |
スポーツ科学概論 | 90 |
スポーツ医学概論 | 60 |
となっており覚えることがたくさんあります。
専門科目の流れ
Ⅰ期
32時間、4日間をオンラインで受講。その後に行う知識確認テストを合格しないとⅡ期には進めない。
Ⅱ期
48時間、5~6日を会場で受講。Ⅱ期を受講する条件として、日本赤十字社救急法救急員の資格を取得しておかないといけません。
Ⅲ期
40時間、4~5日を会場で受講。講習が終了すると併せて、実技確認テストを実施する。
②アスレティックトレーナー養成カリキュラムがある大学、専門学校で学ぶ。
アスレティックトレーナー養成課程がある大学、専門学校で学ぶ方法もあります。この利点として、誰でもアスレティックトレーナーになれるチャンスを得られます。
大学は、短期大学も含めると全国に30校。専門学校は全国に28校あります。
専門学校では最短で2年制となっておりいち早くアスレティックトレーナーになりたい人にはおすすめです。
大学ではアスレティックトレーナーの他に柔道整復師や鍼灸の資格取得がメインでダブルライセンスとしてアスレティックトレーナーを取得できる所もあります。
大学、専門学校で学ぶ最大の特徴は養成講習会免除になるので、検定試験を受けるまでに日本赤十字社救急法救急員の資格を取得しておけば問題ありません。
検定試験の概要
令和4年から形式が変わりました。
従来の形式
理論試験(マークシート方式)→実技試験
令和4年〜の形式
実技確認テスト→理論試験(CBT方式)→面談
CBT方式…コンピューターを使用して行う試験方法のこと。
理論試験
令和4年から形式が変わるので、問題形式も変わるかもしれません。今回は今までの傾向を解説します。
出題形式 | マークシート方式(5択) |
問題内容 | 基礎110問(必修問題10問+一般問題100問) 応用110問(必修問題10問+一般問題100問) |
試験時間 | 5時間(基礎2時間30分、応用2時間30分) |
合格基準 | 必修8割以上+一般7割以上が目安 |
基礎問題内容
①スポーツ科学
②運動器の解剖と機能
③スポーツ外傷・傷害の基礎知識
④健康管理とスポーツ医学
⑤スポーツと栄養
⑥アスレティックトレーナーとしての常識問題
一般問題内容
①アスレティックトレーナーの役割
②検査・測定と評価
③予防とコンディショニング
④アスレティックリハビリテーション
⑤救急処置
⑥アスレティックトレーナーとしての常識問題
実技試験
こちらも令和4年より試験から確認テストになるので多少の変化はあるかもしれません。今までの傾向を解説します。
カテゴリーが3つに分かれておりそれぞれの課題をクリアしていきます。
カテゴリー1 スポーツした際の痛みを色んな検査を行い鑑別する。
(例)陸上短距離選手、全力疾走中に大腿部後面の痛み。
バスケットボール選手、ドリブルの切り返し時に右膝の痛み。
カテゴリー2 怪我した選手の状態を把握し、それに伴ったトレーニングを伝える。
(例)野球選手、2週間前投球時の右肩痛み。腱板損傷と診断。現在温熱療法のみ実施。筋力改善プログラムを実施せよ。
サッカー選手、6週間前にジャンプ着地で左足内反捻挫(2度損傷)。理学的初見に問題はない。この選手に対するアジリティートレーニングを実施せよ。
カテゴリー3 患部へのテーピング
(例)右足関節捻挫の再発予防のための非伸縮テープを用いたテーピングを実施せよ。
非伸縮テープを用いて、左足底筋膜炎のテーピングを実施せよ。
試験時間は約30分。検定員は3人(公認スポーツドクター1名、公認アスレティックトレーナー2名)がそれぞれ評価を行い、合否を決める。
合格率は?
毎年合格者数の発表はありますが、合格率の発表はありません。なので正確な合格率は分かりませんが、おおよそ30%前後と言われています。
因みに直近3年間の合格者数は
令和元年 194名
令和2年 548名
令和3年 335名
となっています。コロナの影響もあり実習が出来ていない人などがいるため、年によってばらつきがあります。
合格するには?
先程も述べたように、合格するのは容易ではありません。理由の一つとして、他の資格では4択のマークシート方式が多い中5択となっているので、問題への理解力が高くないと正解できません。
大事になるのは、過去問などで出やすい範囲や傾向を抑えておくことです。教科数も多いため、効率良く勉強していきましょう。
最後に
アスレティックトレーナーになるための理解は出来たでしょうか?
メディカルな知識も必要になるため覚えることが多いです。しかしアスレティックトレーナーになれたら仕事の幅も広がりますし、やりがいもあります。
今後試験の概要が変わるので、難易度がどうなるかは不透明です。新しい情報が入り次第、更新していきたいと思います。